ネットワーク上にある複数AP間のSSIDやパスフレーズを揃えれば、擬似的な ローミング のような仕組みになりますが、OpenWRT にある 802.11r Fast Transition をきちんと設定すると、より高速な切替が実現出来るのか試してみました。
”なんとなく”ローミング
自宅でGL-iNet GL-AR750S OpenWRTルータを2台(ルータ用と別室AP用)使っていて、両機のWiFi SSIDとチャンネルを合わせて、既にローミングっぽい仕様にはなっています。
特に近年はスマートフォン側の進歩がめざましいこともあり、実際このままでもスムーズにAPを切り替えてくれてくれるのですが、最近たまたま見つけたこちらの記事を読み、一度きちんと設定してみようと思い立った次第です。
日本の住宅とは異なり、香港の住宅の壁はコンクリートやレンガで作られていることから、WiFi電波のカバレッジは狭く、大して大きくない集合住宅でも複数のAPを設置するのが通例です。
実際に自宅のリビング(ルータAP有)から寝室(AP有)へ、スマートフォン片手にゆっくり移動しながらPing発信してみると、数秒のタイムアウトが有りました。
LUCI上で802.11rを設定
ルータやAPとして運用しているこの2台のGL-AR750Sはいずれも、メーカー謹製ファームウェアv3.211で動いており、OpenWRT部分のシステム情報は次の通りです。
OpenWRTのLuCIを Network → Wireless と進んでWirelessインターフェイスの一覧を開き、2.4GHz, 5GHzでそれぞれ設定しているSSIDの Edit ボタンを押して編集します。
Interface Configuration 項の Wireless Security タブの中に802.11r Fast Transitionのチェックボックスがあるので、
チェックを入れると関連設定項目がずらっと現れて慄きますが、入力必要なのは下図の赤枠部分。
具体的な設定値は以下の要領で。
- NAS ID
: 一意な文字列が求められるようなので、BSSIDからコロンを抜いてNAS IDとします。 - Mobility Domain
: 任意の4桁の16進数もこちらはローミングSSID間で揃える必要があり。 - FT Protocol
: コントローラ不在なのでFT over the Airを選択。 - Generate PMK Locally
: チェックが入っていることを確認。
設定を保存し、さらに残るSSIDへも同じ要領で設定したら最後にSave & Applyを押して変更した設定をシステムへ反映させます。
以上の操作により、設定ファイルには以下の項目が追加されました。
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config wifi-iface 'default_radio0' option ft_over_ds '0' option ft_psk_generate_local '1' option nasid '############' option mobility_domain '4765' option ieee80211r '1' config wifi-iface 'default_radio1' option ft_over_ds '0' option ft_psk_generate_local '1' option nasid '############' option mobility_domain '4765' option ieee80211r '1' |
802.11rローミング動作の確認
これで802.11rローミングがセットアップされましたが問題はその確認方法。
冒頭の図2で示したようなPing応答テストでの瞬断は解消されたので機能している筈なのですが、AP側で何か明示的にステータスやログの形で確認出来ないか調べてみると、こちらのフォーラムでログレベルを引き下げて確認する手法が紹介されていました。
CLIから発行するコマンドは次の通り。
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# uci set wireless.default_radio0.logger_syslog_level=1 # uci set wireless.default_radio1.logger_syslog_level=1 # uci commit |
WiFiを再起動しLuCIの System Log を確認するか、量が多ければターミナルから grep でhostapdに絞って出力すると良いでしょう。
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# logread | grep hostapd |
本来ならば次のようなログエントリを確認出来るはずですが、何度見返しても出会えず仕舞い。
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IEEE 802.11: authentication OK (FT) WPA: FT authentication already completed - do not start 4-way handshake |
正常に機能しているのか懐疑的な中、クライアント側でWiFi接続情報を確認していると、 WPA2-PSK+FT と表示されるようになったので、確かにFast Transitionが利用可能になったと納得することにします。
DAWNによるバンドステアリングできず
お手本にしていた元記事の通り、続いてはAPから能動的なバンドステアリング出来るようにしようと、DAWNパッケージを探しますがヒットしません。それもそのはず、パッケージ情報を確認するとサポートはOpenWRT 21.02以降でした。
DAWNを入れるとバンドステアリングを始め、複数AP間のWiFi運用情報共有など楽しそうな機能満載なだけに残念です。
OpenWRT公式サイトにあるGL-AR750S情報ページによると、メーカー謹製ではないOpenWRTファームウェアで21.02.3がサポートされているので、別途時間を作って挑戦してみたいと思います。